やきもの随想

「一焼き、二土、三細工」



粘土の来歴
土にも個性が
稲藁の痕
弥生の土(1)
弥生の土(2)
難波津焼



造形方法
美の背景
ビールマンとフォスベリー、そして末續慎吾


釉薬とは
灰の不思議
灰汁



焼成方法
火=炎の力




陶芸とやきもの
偉大な韓国人
感性的感情
劫の想像力
水晶を飼う

土にも個性が


 ひとくちに[やきものの土]といってもいろんな種類があります。
白い土、黒い土、茶色い土、赤っぽい土、緑がかった土、灰色の土…
色の違いだけでもまだまだありそうです。また粘土分の多い土(粘っこくて緻密な土)、砂っ気の多い土(粒子が粗い土)もあります。

人にもそれぞれ個性があるように、土にも個性があります。
 同じ釉薬(うわぐすり)をかけて、同じ窯(かま)で同じように焼いても、土が違えば出来上がったものは違ってきます。
一般的に言って、市販の土は陶芸の土として安定した性質を持っていますが、山や田、工事現場などから直接採取した土は、ロクロで形を作る場合も窯で焼く場合もなかなか思うようにはいきません。
粘りすぎる土、いわゆる腰のない土はロクロで大きいものを作ろうとしてもなかなか難しく、同心円状に形ができずに歪んだりします。逆に粘土分の不足からすぐひび割れる土もあります。また上手に形ができたと思っても焼くと、ひび割れたり、形が崩れたりする土だってあります。
 これらは陶芸の土としては弱点なのですが、その弱点を反対に生かして、その土ならではの[やきもの]を作ることに[やきもの]のおもしろさもあります。
ゆがみがちな土は無理をしてキチット作ろうとしないで、ゆがんだ形を生かしたやきものを作れば、無理のない自然な造形(力強かったり、優しかったり、野性的であったり)になって、その土独自のやきものに仕上がります。
ひび割れがちな土は、釉薬をかけて焼いても表面がカサカサして食器には不向きですが、花器にするとそのカサカサが何とも言えない雰囲気を出すことだってあります。誤解を恐れずに言えば、そんな土で食器を作った場合でも使い方と扱い方さえ間違えなければ、すばらしい個性を発揮します。

こう考えると、弱点はその土の個性に変わります。その個性を粘り強く発見し、生かし方を追求することが[やきもの]の可能性を広げることにもなります。
ひとりひとりの[ひと]についても同じことが言えるような気がします。










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