やきもの随想

「一焼き、二土、三細工」



粘土の来歴
土にも個性が
稲藁の痕
弥生の土(1)
弥生の土(2)
難波津焼



造形方法
美の背景
ビールマンとフォスベリー、そして末續慎吾


釉薬とは
灰の不思議
灰汁



焼成方法
火=炎の力




陶芸とやきもの
偉大な韓国人
感性的感情
劫の想像力
水晶を飼う




















感性的感情


昭和40年代までは確かな実感をともなって存在していたいろいろな感覚。そしてその感覚から発生する感情。今は世の中からこのような感覚も感情も確実に消え去ろうとしています。個々人の意識と身体の深層に刻み込まれ、さまざまな存在の深淵を覗かせてくれた大切なもの。

視覚
  ●秋の夕暮れ、大量の赤とんぼが庭先で乱舞する。
聴覚
  ●梅雨時の夜、前の道に出ると蛙の声のみ響き渡り、空には天の川。
触覚
  ●田んぼの中の水路で股までズボンをたくしあげる。痛みを感じふと足を見ると、3〜4匹のヒルが足に吸い付いている。ヒルを離そうとして引っ張るがなかなか離れない。その時のいやな感じ。
●おできにたかるハエの足跡、あるいは顔の上を移動するハエの足跡を感じたときのうるささ。
●薄暗い長屋の2階(牛小屋の上)は脱穀がすんだ藁が積んである。もうもうと藁埃のあがるなか藁まみれ・汗まみれになって取っ組み合いをして遊んだ感覚。藁がシャツの中に入って体全体がチカチカして痒かった。ゼエゼエ言いながら光と新しい空気を求めて外へ飛び出たことか。
●半そで半ズボンで山に入り、小枝やカヤ、シダに引っかかれた傷を無数に受けたときのあの感覚。

味覚
●道端の「スイスイ葉」をガシガシ噛んだときの何ともいえないスッパサ。
嗅覚
●牛小屋の何ともいえない懐かしいにおい。
●草刈をして、夏のむせ返る草のにおい。肌にべっとりつく衣服。

痛み
●風呂焚き・かまど・七輪・落ち葉焚きの煙が目と鼻に染む痛み。
●しもやけやひび割れの手で水洗いするときの無感覚と、痒みと熱のある痛み。

存在への驚き(感動)
●北陸の農村で、日暮れにたきぎを背負った少女のすきとおった声を聞いたときの痛みを覚えた感情。
●牛小屋の何ともいない薄暗さと、そのなかでじっとしている牛の態度。

遠い記憶をたぐって自分の感性的感情を探ってみるのも意味のあることでしょう。





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