やきもの随想

「一焼き、二土、三細工」



粘土の来歴
土にも個性が
稲藁の痕
弥生の土(1)
弥生の土(2)
難波津焼



造形方法
美の背景
ビールマンとフォスベリー、そして末續慎吾


釉薬とは
灰の不思議
灰汁



焼成方法
火=炎の力




陶芸とやきもの
偉大な韓国人
感性的感情
劫の想像力
水晶を飼う

灰汁


はいじる−灰汁−と書いて、「アク」と読みます。

草や木を燃やせば灰ができますが、釉薬(ウワグスリ)を作るときその灰を利用します。しかし灰はアクをたっぷり含んでいるためにアクを抜いて使うことになります。アクは釉薬に縮れをもたらしたり、発色を鈍くしたり、いろいろな弊害があると言われています。アクを抜くには、篩でこした灰を大きめのポリバケツに入れて、そこに水を注ぐと、アクが灰から溶け出てきます。いかにも「はいじる=灰汁(アク)」という感じです。その灰汁を捨てて、新たに水を注ぎます。「灰汁を捨てては、水を注ぐ」を、繰り返して、灰汁(アク)を抜きます。

灰汁はなにも灰から出るだけではありません。いろいろな物から灰汁は出ます。

やきもので言えば、粘土がそうです。掘ってきた粘土をそのままロクロで使うと、回転中の粘土と手の接触している部分から、ごく小さな気泡交じりのヌメヌメした粘土のエキスのようなものが大量に出てきます。これが灰汁です。それはまるで土汁のようです。粘土の灰汁は、耐火度を弱めると言われています。粘土の灰汁を抜くには、こぶし位の大きさに粘土をちぎって、乾かし、布袋に入れて、雨に繰り返し打たせます。灰の灰汁を抜くのと同じ理屈です。

また、魚や動物や鳥から灰汁が出るのも鍋料理などで私達は経験的に知っています。海水から食塩を採る過程でも、やはり灰汁が出るそうです。海水を煮詰めていくと、灰汁が出るので、それを網で掬い取るのです。その後、食塩が析出します。もちろん植物にも灰汁はあります。 こう考えると、多くの物質が灰汁を含んでいるように思えてきます。人間にもあるようです。ところで、灰汁の成分は同じなのでしょうか?なぜか灰汁(アク)は、「灰汁」としか書かないようですが、不思議です。

釉薬の灰汁を抜かずに作業をすると、手がボロボロになりヒリヒリします。
木や草の灰の灰汁はPH11以上の強いアルカリ。爪を溶かしてしまうのです。爪の先はペラペラになって、指先の指紋は溶けて消えてしまいます。やはり灰汁は抜いたほうがいいようですが、アクが強いのもおもしろいものです。






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