やきもの随想

「一焼き、二土、三細工」



粘土の来歴
土にも個性が
稲藁の痕
弥生の土(1)
弥生の土(2)
難波津焼



造形方法
美の背景
ビールマンとフォスベリー、そして末續慎吾


釉薬とは
灰の不思議
灰汁



焼成方法
火=炎の力




陶芸とやきもの
偉大な韓国人
感性的感情
劫の想像力
水晶を飼う

灰の不思議


 ものを燃やせば大抵のものは灰になります。
とくに生命体である有機物を燃やせば灰が残ります。木や花や草など植物はもちろんのこと、魚や鳥、昆虫や爬虫類、動物や人間などの哺乳類も燃やせば骨と灰になり、骨もさらに高温で焼くと灰だけが残ります。この灰はすべて釉薬の原料になるのです。無機物でも火山灰、石灰など文字どおり灰とつけば釉薬の原料になります。

 ところでそれぞれの灰の成分は微妙に異なり、その成分の違いが釉薬の色の違いや溶ける温度の違いとなってあらわれます。植物の灰を使った経験から言えば、木灰、草灰、わら灰、笹灰、もみ灰の順に溶けにくくなるようです。また木灰は緑や茶、草灰は草色、わらは白っぽく、笹やもみは黄色みを帯びた色になりがちですが、釉薬の他の成分や、やきものの土、焼き方によって一概には言えません。さらに同じ植物の灰でも成長のどの段階の灰か、どんな土壌に育ったかによっても灰の成分が違ってきて発色が違うようです。
 以前、熊本に行った際、いぐさの灰をいただいて帰り、釉薬に使ってみましたが茶色に発色しました。わらと似ているだろうと思っていましたが、見事に裏切られました。その後雲仙の火山灰をいただいたのでさっそく試して見ると、なんといぐさの発色に近いではありませんか!その時《いぐさが火山灰地で作られていた》ことに気づいたのでした。

灰は以前、畑の肥料や火鉢の灰に利用されたり、あく抜きに使われたり大活躍でした。ワラビやゼンマイを木灰であく抜きすると美しい深緑になります。また木灰のあくは草木染めにも利用され、自然な発色を助けるそうです。
 今では灰も貴重品でなかなか手に入りにくくなっています。そこで人工的に調合して灰が作られています。合成木灰、合成わら灰、合成栗皮灰というふうにです。しかし自然の灰とは味わいが違うと言われています。












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