やきもの随想

「一焼き、二土、三細工」



粘土の来歴
土にも個性が
稲藁の痕
弥生の土(1)
弥生の土(2)
難波津焼



造形方法
美の背景
ビールマンとフォスベリー、そして末續慎吾


釉薬とは
灰の不思議
灰汁



焼成方法
火=炎の力




陶芸とやきもの
偉大な韓国人
感性的感情
劫の想像力
水晶を飼う





偉大な在日韓国人


大阪、中之島のシンボルはなんといっても中央公会堂でしょう。赤レンガと御影石のその建物は中之島にロマンの香りを運んできます。中央公会堂と道路をへだてて向かい合うのが東洋陶磁美術館です。しっとりと落着いた外観は派手さはありませんが、飽きのこない味わい深い建物です。
東洋陶磁美術館は、東洋陶磁のコレクションでは世界的に有名な「安宅コレクション」の寄贈を受けた大阪市がその展示のために建てたもので、昭和57年に開館しました。国宝2点と13点の重要文化財を含む2000点あまりの貴重な陶磁器を所蔵しています。
そして1999年、東京在住の在日韓国人の李秉昌(イ・ビョンチャン)さんは、自らの韓国・中国陶磁コレクション375点を大阪市に寄贈されました。評価額はおよそ45億円。東洋陶磁美術館は「李秉昌コレクション」を展示するための新館を建て迎え入れました。李さんは1949年外交官として大阪に赴任して以来日本で過ごされ、その間に収集されたということです。

大阪市に李秉昌コレクションを寄贈するに当って、李秉昌さんは次のようなメッセージを残されています。

「私は50余年間という長い歳月を「在日韓国人」として過ごす中で、祖国をなつかしむ思いで、韓国陶磁を蒐集してきました。私の分身のように、あるいは我が子のように愛してきたこれらの陶磁器を、どこに、そしてどのように保存すれば、韓国陶磁の美しさを広く知らしめることができるか、と長い間、考えに考えを重ねてきました。
長きにわたる苦悩の末、私が下した結論は、これらの陶磁器を日本にとどめ、研究し、美術館に展示することによって、在日同胞の子孫達が祖国の文化を学び、矜持を持てるように取り計らうべきだ、というものでした。大阪市は、1980年「安宅コレクション」の寄贈を受け、大阪市立東洋陶磁美術館を設立し、韓国陶磁を中心に東洋陶磁を常設されていますが、私のコレクションがこれに加わりますと、時代別、内容別に互いに補完しあうことになり、韓国陶磁の美しさがいっそう豊かに伝わることになる、と考えるに至りました。
今後、「李秉昌コレクション」が韓国人と日本人、そして大阪を訪れる世界の人々に韓国陶磁の美しさを伝える文化使節となることができれば、祖国を愛する心で祖国の陶磁器を蒐集してきた私としまして、これ以上の喜びと生きがいはありません。」
1999年1月22日 李秉昌




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