やきもの随想

「一焼き、二土、三細工」



粘土の来歴
土にも個性が
稲藁の痕
弥生の土(1)
弥生の土(2)
難波津焼



造形方法
美の背景
ビールマンとフォスベリー、そして末續慎吾


釉薬とは
灰の不思議
灰汁



焼成方法
火=炎の力




陶芸とやきもの
偉大な韓国人
感性的感情
劫の想像力
水晶を飼う

焼成方法


やきものは、文字通り「焼く」工程を経て完成します。

 「焼く」と粘土の成分の一部が溶けてガラスとなり、土の粒子の間を埋めていきます。このガラス化は500〜600度から始まります。温度が上がれば上がるほどガラス化は進み、土の粒子と粒子は緊密に結び着くことになります。粘土が一部しかガラス化しないのに対して釉薬はすべてがガラス化するため、粘土表面にガラスのコーティングをした状態になり、水の漏れないやきものになるわけです。その時の温度は1200℃を越えます。

 「焼く方法」もずいぶん変化して来ました。
縄文土器や弥生土器は地面を掘りくぼめた上に土器を並べ、上から柴や木切れ、草などをかぶせて火をつけ、次から次へと燃料を補給して焼いたと類推されます。古墳時代になると斜面に下からトンネルを掘り、その内に作ったものを並べて下の穴から薪を焚き、上の穴から火や煙が出るようにした窟窯(あながま)が登場したと言われます。須恵器が焼かれたのはこのような窯だったようです。さらに時代が下ると燃焼効率のよい登り窯が開発されます。窟窯がひとつの長いトンネルで前と後ろの温度差がはなはだしいのに対して、登り窯はたくさんの部屋を設けて下の部屋から順番に焚き上げていく窯です。下の部屋を焚いている間に上の部屋があたためられるため燃料は少なくて済み、窯の中も比較的均一の温度で焼きあがります。
 今では技術革新も進み、燃料も薪(まき)にかぎらず、ガス、灯油、電気など多岐にわたっています。むしろ薪で焚く窯は資源の面や煙が出るということで少数派になったようです。コンピュータ制御のハイテクを駆使した窯も身近なものになっています。マンションで2〜3時間で焼き上げることのできる窯だってあります。

先端技術のおかげで今では、〈使い・鑑賞する陶芸〉から〈誰もが作る喜びを味わえる陶芸〉になりました。しかし燃料や窯の構造が変われば、火の性質や火の流れ方、温度分布、灰の有無などが違って、焼かれてできる「やきのの」の表情もずいぶん変わってきます。多様化する美の背景がここらあたりにもありそうです。







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