徒然の記

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2004年12月1日(水) 再度、デュシャン展へ

調べもせずに6時くらいまで開催しているだろうと思って行きましたが、5時に閉館。
入ったのが4時15分。
45分しかありません。
ゆっくり眺める暇はありませんでしたが、主な収穫は次の2点。
●同心円を少しずらして回転するロトレリーフは大極図の循環を示していること。
●ジョン・ケージのシルクスクリーンで文字を書いたアクリル板を数枚の重ねて見えるようにした作品「Not Wanting To Say Anything About Marcel」は、表題とは違ってCageの重層的なDuchamp観を雄弁に物語っていることが興味深い発見でした。


中央の楕円状の建物が大阪市立科学館、左のパイプ上の構造物の地下が国立国際美術館


橋の上から西を臨むと、大阪湾。上の写真とほぼ同時刻、4時12分



2004年12月2日(木) 

なんという名の苔か知りませんが、スギの樹皮のかなりの面積を占めています。
この一本から周囲のスギにも飛び火しそうな勢いです。
観察することにしましょう。


2004年12月3日(金) 一周回って

何の因果で一周回ったのでしょうか?


2004年12月4日(土) 黄〜その1

自然のなかには鮮やかな色彩が点在しています。
気が付いた折に、そんな色彩を切り取っていきましょう。

この時期にキチョウが気持ちよさそうに飛び回っています。
この蝶は成虫のまま羽をぼろぼろにしてまでも越冬し、春を待ちわびるそうです。
レモンイエローの黄色はひときわ目を惹きます。
黄色のなかのごみのような細い黒のラインも音符のような味わい。


ひらひら飛び回って結局花に停まる。この時期、花も少なく蝶は飛びつかれる。


2004年12月5日(日) 黄〜その2

元気なタンポポの花を見つけました。
11月23日の「徒然の記」で綿毛の付いたタネを紹介したばかりですが、順序が逆になりました。




おしべの先端にめしべが付いていて、めしべは二つに分かれてカールしている。
このおしべとめしべも昨日のキチョウの黒のラインに似てどこか音楽的。


2004年12月6日(月) 白〜その1

ヒメジョオン(姫女苑)が工房の入り口に咲いていました。
夏から秋にかけてよく見かけた花ですが、今も咲いています。
しかも『まだまだ咲くぞ』と言わんばかりにたくさんのつぼみまで付けて。
北アメリカ原産の帰化植物で世界中に帰化していると言うことで、日本には江戸時代末期に鑑賞用として導入され、ヤナギバヒメギク(柳葉姫菊)の名前で呼ばれていたそうです。
この時期、野草は少ないのですが気をつけて見ていると結構あるものです。


2004年12月7日(火) 黄〜その3

黄色の花は思いのほか多いものです。
この花はアキノキリンソウという花で、道端でよく見かけます。
12月に入ってあまり見かけなくなりましたが、可憐に咲いています。


2004年12月8日(水) オレンジ〜その1

10月21日の「徒然の記」の柿木の実。
台風の大風にもめげず、たくさんの実をつけていましたが、葉をすべて落とした今でもいっぱいの実を付けています。
ほとんどの柿木の実が鳥たちに突かれているのに、この実は被害にあっていません。
どうなっているのでしょうか?
柿の色をオレンジというのはおかしいのですが、橙色もおかしい。正確には柿色というべきでしょうが、一応ここら辺りのゾーンをオレンジということにしておきましょう。



2004年12月9日(木) キノコ

キノコは種類が多くて門外漢には見分けが付きにくいものです。
このキノコは何という名前が付いているのでしょうか?





2004年12月10日(金) 成道会(12月8日)

クリスマスが近づくと、それにまつわる音楽が鳴り響いて、ちょっと浮き足立った心持になります。クリスチャンでもないのに妙なものです。
仏教徒にとってはクリスマスより、2日前の12月8日の成道会を知るべきでしょう。
釈迦が悟りを開いて仏陀になった日です。
12月8日はジョン・レノンが射殺された日でもあります。

赤い実と黒い実がありました。








2004年12月11日(土) 赤〜その1

植物の実や葉にはこの時期思いのほか赤い色を見かけます。
緑や枯葉のなかに混じると、ハッとさせられるほどの美しさを感じることもあります。
この赤い葉の植物の名前は知りません。
鮮やかですが渋めの赤で目を惹きました。


2004年12月12日(日) 漢字の日

今日は日本漢字能力検定協会が1995年に制定した「漢字の日」ということです。
「いい字一字」の語呂合わせで12月12日になっています。
漢字1字で表す「今年の漢字」を全国から募集し、12月13日に京都の清水寺で発表されます。
毎年、清水寺の奥の院の舞台で揮毫される模様がテレビで放映され、いまや年末の年中行事になった感があります。

1995年は「震」⇒阪神・淡路大震災、オウム真理教事件
1996年は「食」⇒O−157食中毒事件、狂牛病の発生
1997年は「倒」⇒山一証券などの大型倒産
1998年は「毒」⇒和歌山のカレー毒物混入事件
1999年は「末」⇒世紀末
2000年は「金」⇒シドニーオリンピックでの金メダル
2001年は「戦」⇒アメリカの同時多発テロ事件
2002年は「帰」⇒北朝鮮に拉致された方の帰国
2003年は「虎」⇒阪神タイガース優勝

月日の移り変わりの速さを感じます。
今年もいろいろありました。
10年目を迎える「今年の漢字」。今年の世相を反映する漢字は何が選ばれるでしょうか?
発表は明日、12月13日です。

2004年12月13日(月) 今年の漢字は「災」

新潟県中越地震や台風などの災害、イラクの人質殺害などのイメージから「災」の字が今年の漢字に選ばれました。
過去に選ばれた漢字を見ても何故か一年間を代表する漢字はマイナスイメージを持ったものが多いようです。
プラスイメージは2000年の「金」と2003年の「虎」くらいで後は暗いイメージの漢字です。
マイナスイメージのほうが心に残りやすいのでしょうか?

2004年12月14日(火) 『脱構築・マルセルデュシャン展〜養成術としての芸術〜』にむけて

11月21日の『徒然の記』で炭化の作品のことを書きましたが、焼けた作品の写真です。
二つの作品とも黒く焼きあがる予定でしたが、予測が見事に外れました。
意図に反したものになりましたが、面白い焼き上がりになりました。
少しづつ焼成条件を変えることで原因を考え、ある程度コントロールできるようにしたいものです。

2月1日から福岡で『脱構築・マルセルデュシャン展〜養成術としての芸術〜』を数人で開催します。現在、それに向けての作品を作っているところです。
これまでは器として使用することを目的とするやきものをつくってきましたが、今度の展覧会ではArtとしてのやきものを発表することになります。
造形技法も釉薬や焼成技法も今までの方法とはかなり違ったものになります。
あと1ヶ月半もないので、実験がほとんどできず、今までの勉強不足が悔やまれますが、類推で私の経験しなかった分野へ足を踏み入れることになります。
この『徒然の記』でも発表する作品の一部をご覧いただこうと思っています。



2004年12月15日(水) 『能勢の空気』

デュシャンの作品に『パリの空気』(1919年)があります。
これは空になった薬のアンプルをパリの薬局で修理してもらったもので、結果として中にパリの空気が封印されることになりました。


『パリの空気』


私は『能勢の空気(仮題)』を作りました。
デュシャンの『パリの空気』はガラスで中の空気が見えますが、私の『能勢の空気(仮題)』はやきもので内部は見えません。小壺の口は写真では開いているように見えますが、完全に閉じられています。果たして中に空気が入っているのでしょうか?
展示方法でそれを証明しなければなりません。


口が開いているように見えるが、完全に閉じている。果たして中の空気の存在証明は?



2004年12月16日(木) 『Self-Portrait in Profile』

デュシャンの作品に『Self-Portrait in Profile』という作品があります。
黒色の背景に黄土色の紙を切り張りしてデュシャンの横顔のシルエットを現した作品です。

『Self-Portrait in Profiel』

この作品からいろいろなイメージが喚起されます。
本当にこじつけですが、顎の下にみっつの○が並んでいますので、みっつの応えを用意しましょう。

1つ目の応え………
斜め下向きに視線を落とした先は、どこを見つめているのでしょうか?
黄土色の空間を過ぎって黒色の空間へと進んでいます。
それは無と虚を見続けたいかにもデュシャンに適った表現だったのでしょう。
私はシルエットのシルエットでデュシャンのProfileを表現してみました。
さらにダブルシルエットの視線の先はどこを見つめているのでしょうか?
写真の作品は乾燥中のもので、素焼き、本焼きして完成する予定ですが、うまくいくかどうかわかりません。


鼻の形が違うようですが、




2004年12月17日(金) 水蒸気を吐くDuchamp's House

制作途中の作品、Duchamp's House。
冬の朝の弱い斜光を浴びながらも水蒸気を放っていました。
わずかの時間の現象でしたが、いいものを見せてもらいました。


ふたつのDuchamp's Housesから煙(水蒸気)が


2004年12月18日(土) パウル・クレー

1879年12月18日はパウル・クレーの誕生日です。
最近はマルセル・デュシャンのことをテーマにしていますが、デュシャンの誕生日が1887年7月28日で、クレーはデュシャンの8歳年長になります。
同時代に活躍した芸術家ですが、ふたりの接点は全くなかったように思います。
デュシャンが絵画や芸術の概念を破壊し変革したのに対し、クレーはあくまで芸術の内部にとどまり線や色彩表現と心、感覚、感情との関係を体系付けようとした画家で、クレーの詩的魂はやはり宇宙との共振をとらえたのではないでしょうか。
私の敬愛してやまない画家です。

2004年12月19日(日) デュシャン展

デュシャン展も今日が最後、しつこく、見に行きました。
同じ展覧会に3度も行くのは初めて。会場は最終日ともあって、若い人を中心に大勢の人が熱心に鑑賞していました。


近くから見ると面白い


今回の発見
●前回も気になっていた作品。良く見ると題名が『プロフィールの時計』となっています。
これは16日に書いた『Self-Portrate in Profile』と同じ題名のつけ方で、元々『The Clock in Profile』という題です。
両作品とも側面からものの本質を透視しようとしたものです。

『プロフィールの時計』

●もう一つ。『秘められたる音に』という小さな修正レディメイド。
欲を捨て、悟りの境地を表したものですが、この作品は動かすと音がするそうです。

『秘められたる音に』

この作品は上の真鍮板の表面に英語とフランス語で文字が書かれていますが、実はもう一箇所文字が書かれているところがあったのです。
私が見た図録や本、今回の展示会でもその書かれている箇所は見ることは出来ないのですが、確かに書いてあるのです。ある工夫をすると見えるようになるのです。
デュシャンの作品はいろんなたくらみがしてありますので、細部まで気をつけて見ないと、見落とす可能性が高いのです。油断もすきもありません。



2004年12月20日(月) 『Self-Portrait in Profile』〜2つ目の応え

『Self-Portrait in Profile』の2つ目の応え………
「デュシャンがデュシャンの内面を覗いている」と想定してごらんのような作品を作ろうとしています。




2004年12月21日(火) アポロ8号

3人の飛行士を乗せ1968年の12月21日に打ち上げたアポロ8号。初めて月の周回軌道に乗せることに成功しました。アポロ8号のなかから撮影した月に登る地球の写真に世界中の人が感動しました。
その翌年の1969年7月20日にはアポロ11号でアームストロング船長とオルドリン飛行士が人類で初めて月に降り立ちました。
そして1970年、大阪で開かれた万博でアメリカ館にそのとき持ち帰った月の石が展示され、大変な人気を呼びました。
30年以上も前のことです。

2004年12月22日(水) シーラカンス

1932年の12月22日、南アフリカ東岸沖で体長1.5mの奇妙な魚が捕獲されました。この魚がシーラカンスだったのです。
約4億年前に出現し、数千年前に絶滅したと言われていたシーラカンスに『生きている化石』の名称が与えられました。
数年前、シーラカンスが水中で泳ぐ姿を映した映像を見ましたが、大きな鰭を使って、ゆったりと優雅に水中を漂っていたように記憶します。
シーラカンスは人類の大先輩です。

2004年12月23日(木) 「空っぽ」

デュシャンは「空っぽ」をテーマに芸術を考えました。
デュシャンの提出したオブジェはほとんどこの「空っぽ」と関係しています。
壺はもとより「空っぽ」の部分があってはじめて機能します。
八木一夫は壺に穴を開けることによって、機能を失った壺にオブジェを発見しました。
この壺は内部と外部の連続性、あるいは境界に焦点を当てたものです。


2004年12月24日(金) 黄〜その4

年も押し迫ったところのセイタカアワダチソウです。
女優の十朱幸代さんが、この花にちなんだ歌を歌っていました。
最盛期はもっともっと背が高く、もっともっとあざやかな黄色ですが、勢いは弱めているものの元気に咲いています。


冬の陽射しを浴びてやさしげなセイタカアワダチソウ


2004年12月25日(土) ジョアン・ミロ

調べてみると、1983年の12月15日にジョアン・ミロが亡くなっています。
誕生したのが1893年。90歳まで生きたことになります。
12月18日に書いたパウル・クレーとも似たところのある画家ですが、シュールレアリズムの運動にも加わって独自の画境を築いた画家です。
ミロはスペインのカタルーニャの出身で、ピカソやダリ、ガウディも同じカタルーニャの出身でそれぞれ独創的な仕事をした人たちです。
八木一夫もミロに影響を受けたひとりで、ミロが来日したとき少年のような笑顔を浮かべて話をしている写真のふたりが印象的でした。

チャップリンも1977年の12月15日に亡くなっています。
生まれたのが1889年。ミロとほぼ同時代です。

2004年12月26日(日) 満月

暦によると明日が『満月』。
今日は満月の前日なので『小望月(こもちづき)』と言うそうです。

満月の翌日の月を『十六夜(いざよい)』。
…月の出が満月より少し遅れるため月がためらっていると見立てて「いざよう」からできた言葉と言われています。

その翌日の月を『立待ち月』。
…立ち待ち月とは満月の月が出る時間から突っ立て待って居るうちに月が出てしまうからとか、または、立ちながら待っていても疲れないうちに出て来るなどの意味があるようです。

その翌日の月を『居待ち月』。
…居待ちとは、座って待つことで十七日月よりさらに月の出が遅いため立って待っていたのでは疲れてしまうからという意味だそうです。

さらにその翌日の月を『臥し待ち月』『寝待ち月』。
…臥し待ち(ふしまち)・寝待ちとは、19日頃には満月の月の出から4時間程遅くなることから、もはや月は寝て待つということになる意味だそうです。

さらにその翌日は『更待ち月』。
…夜も更けてからようやく出る月と言う意味だそうです。

このように『十三夜』あたりから『更待ち月』くらいまでの月は一日一日、特別な名前を与えています。
昔の人は微妙な変化をかぎわけ、楽しみ、生活に役立てていたのでしょう。
月の満ち欠けを暦とした太陽太陰暦はなんと風流なことでしょう。
自然環境との関係が感覚でわかるようになっています。
風流の復権を願いたいものです。

2004年12月27日(月) マレーネ・デートリッヒ

1901年12月27日にマレーネ・デートリッヒが生まれています。
反戦歌「リリーマルレーン」は有名ですが、なんといっても若いとき見た『嘆きの天使』は印象的でした。
真面目な教師がキャバレーの踊り子の虜になって、日参した挙句、職を追われ、旅興行の道化役にまでなって彼女についてゆき、最後は嘲笑された挙句に野たれ死ぬというストーリー。
デートリッヒの脚線美と寄せ付けない色っぽさ、ヤニングスの内面をさらけ出す演技、ショックでした。
確か1970年の大阪万博のとき来日。そのとき70歳。
1992年に亡くなるまで、確たる信念を持ち、気品と気高さを貫いた女性でした。

2004年12月28日(火) 渡辺明 竜王位獲得

森内竜王・名人に挑戦していた渡辺明6段が4−3で竜王位を奪取しました。
弱冠20歳。将棋界の名人と並ぶ大タイトルの保持者となったわけです。
昨年は羽生王座に挑戦して惜しくも2−3で敗れましたが、2度目のタイトル戦は見事な勝利を収めました。谷川棋王を除けば羽生、森内世代がタイトルを独占していましたが、一回り若い渡辺6段がタイトルを取ったことで世代間争いも進むことでしょう。
何れの世界も若い力の台頭が新しい価値観を生み出し、その世界の推進力になるようです。

2004年12月29日(水) 初雪

うっすらと雪化粧。
例年より少し遅いような気もしますが……


2004年12月30日(木) 窯焚の朝

朝の6時30分に窯の火を入れました。
昨日より少し多くの雪が見えます。
今回の窯焼きは通常の窯詰とは少々異なっています。
炭化をするためのサヤを入れたり、Duchamp's House(仮名)を入れたりしていますので、窯のレイアウトがかなりバランスを欠いています。
結果として、通常の窯焼きより5時間くらい早く終了してしました。
果たして、どうなっていることでしょう。


朝日が顔を出す


煙突から水蒸気を含んだ煙が(同時刻)


かなり西の空にお月様が(同時刻)


2004年12月31日(金) 水、三態

大つごもりですが、かなり大きなお月様が現れています。
音もなく降った雪が辺りを白い風景に変えました。
木々や竹も久しぶりの雪に逢って、戸惑っているようです。
孟宗竹のパンと言って、割れる音がしています。
木が落葉しないで葉をつけていたら、かなりの種類の木々は折れることでしょう。
柿木などは枝に積もった雪だけでも相当しなっています。
元来粘りがなくポキッと折れやすい木なので、雪の重さにひとたまりもないでしょう。
液体と固体の性質の違いを気づかされます。
それに固体の中に隠れている水分が気体(水蒸気)となって現れる現象を、昨日の窯焚や12月17日の徒然の記のDuchamp's Houseの水蒸気で見せてもらいました。
水は身近にあっていろんなことを考えさせてくれます。
冬の水仕事はつらいのですが……


見慣れた風景を一変させる。


しなやかな竹も、折れることも。何故か同じ方向に倒れている。


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