山本家のメダカ

蟻地獄
イトトンボ
山本家のメダカ

















『メダカの学校は川のなか
 そっとのぞいてみてごらん
 そっとのぞいてみてごらん
 みんなでお遊戯しているよ』

という歌詞にも歌われているメダカ。
この歌ができて50年になるそうですが、当時農村のどこにでもいたメダカはすっかり姿を消してしまいました。
99年には絶滅危惧種に指定されました。トノサマガエルやドジョウも絶滅危惧種の指定を受けています。
身近な生き物がどんどん姿を消そうとしています。

ところで能勢の友人の山本家にはメダカがいます。
そのメダカは兵庫県の「武田尾」で捕獲したものです。
今から7〜8年前いないはずのメダカが「武田尾」にいたのです。今そこにいるかどうかは分かりません。
能勢のメダカ博士によると、能勢で自然状態で生息している場所は1ヵ所しか知られていないそうです。


山本家のメダカの住む環境


兵庫県西宮市武田尾の由緒正しいメダカです


クロメダカです。ヒメダカではありません。


『私は武田尾のメダカです。
私たち一族は姿の美しいことでつとに有名。よそのメダカと一緒にしないでください。誇り高き一族なんです。
7〜8年前、私たちのお祖父さん、お祖母さん、よりまだまだ前のお祖父さん、お祖母さんが山本家に引っ越して来て以来、ズート愛情を持ってかわいがられて来ました。
武田尾にそのままいたら、今の私はいなかったかもしれません。
年々住みにくくなっていたことは、お祖父さん、お祖母さん、から聞いています。
ここにいると、怖い怖いヤゴやザリガニがいません。生存競争で神経をすり減らす必要がないので安心して暮らしています。
だだ赤ちゃんの時は大変だったんです。普段はやさしい大人たちが私たちを餌と間違えて食べることがあるのです。狭い池なので見つからないように隠れるのが、一苦労です。
なぜ、赤ちゃんを餌と間違えるのか、一年生の私にはまだ分かりません。

ところで先日、すごい光景を目にしました。
親友のトノサマガエルの一年生がシマヘビにガブリとやられてしまったのです。息をひそめて狙っていたのです。もうびっくりしました。
山本さんの奥さんもちょうどこの光景を見ていました。たまたま郵便配達の人がタイミングよく現れ、シマヘビを木の枝に引っ掛けて池から出してくれました。
奥さんの話によると、シマヘビは悠然とトノサマガエルを食べて、それから姿を消したそうです。
これが弱肉強食ということをあとから教えてもらいました。あの大人たちに。
そういえば、トノサマガエルはアマガエルを食べていたし…………
いっそのこと、山本さんか、郵便配達の人がシマヘビを食べてくれたらいいのにと思ったものです。

この7〜8年の間に山本さんはせっせと由緒正しい私たち一族を、メダカを欲しがる人たちに分けて来たので、今では大阪市内にも武田尾の一族が住んでいることになります。
みんな安心して生活していることでしょう。
自然の中で暮らせば、大体1年半の命です。ここでは4〜5年も生きた先輩もいるそうです。
夏から秋にかけてはのびのび遊びたいと思っています。
木の葉が池に沈む頃、長い長い冬休みに入ります。そして来年は大人になります。この冬休みはゆっくり考えてみたいと思います。

一週間前も他の池で、生まれて間もない赤ちゃんが一匹もいなくなったと山本さんが話しているのが聞こえました。』



この角度でメダカを見ると、メダカのイメージもかなり変わります


背骨が透けて見えます



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