脱構築
マルセル・デュシャン展

養生術としての芸術


2005年2月1日(火)〜2月6日(日)
a.m.11〜p.m.7(6日は〜p.m.5)

会場:ギャラリー風
福岡市中央区天神新天町北通り
092-711-1510

主催:DAO WORKSHOP


現代美術の源流になっているマルセル・デュシャン。当時の美術がキャンバス上での美の変革をめざしたのに対して、デュシャンは美術そのものとは何かを問いかけました。
デュシャンの作品として一般的によく知られているのはR.Muttとサインされ『Fountain(泉)』と名づけられた便器です。
これは1917年ニューヨークの「独立派アーティスト協会展」で展示拒否されたものです。6ドル払えば誰でも出品できたにもかかわらず展示されませんでした。
しかもこのオリジナルの『Fountain(泉)』はなくなり今では複製しかありません。つまり物ではなく《考え》が残ったのです。
デュシャンが発見したレディメイドや創作物、生き方そのものの《考え》をめぐる様々な解釈がデュシャン以後の美術 〜ポップアート、ネオダダ、コンセプチュアルアート、パフォーマンスなど〜の大きな潮流となりました。
しかし未だにデュシャンのかけた謎は解かれないままにあります。

脱構築 マルセル・デュシャン展は「デュシャン芸術は中国の易経、老荘思想、道教に依拠する」との解釈のもとに行うものです。
出展者は5〜6人で映像、ミクスト・メディア、彫刻、やきものと表現はいろいろです。
私はアートとしてのやきもので参加します。





代表的出展作品の紹介〜制作中の作品も含みます〜
順次、紹介していく予定ですが制作がおくれているのでどうなることやら


『樞始得其環中、以應無窮。』

荘子の齊物論に出てくる言葉です。


『時』

止まっているのに動きを連想させる。陰を含んだ陽、陽を含んだ陰。
それが大極図です。

デュシャンは大極図を素にロトレリーフを創りました。


『Please Look Into The Inside』

座禅をしているような姿をしています。



『デュシャンの窯』

この窯の焼成現象はデュシャン芸術の構造と同じです。








『? 壺』

デュシャンは「空っぽ」をテーマに芸術を考えました。
デュシャンの提示したレディメイドはほとんど「空っぽ」と関係しています。
壺はもとより「空っぽ」の部分があってはじめて機能します。
この壺は内部と外部の連続性、あるいは境界に焦点を当てたものです。
『薄い境界』

デュシャンの造語で『infra-mince』(アンフラマンス)というキーワードがあります。
日本語で『極薄』、英語では『infra-thin』『infra-delicate』『infrafine』などと訳されているようです。
デュシャンは『infra-mince』を定義していないので解釈がまちまちですが、私はさしずめ壺の内部と外部の境界(臨界)にアンフラマンスを感じます。
『どこまで内部』


『混沌』

デュシャンの作品に『パリの空気』(1919年)があります。
これは空になった薬のアンプルをパリの薬局で修理してもらったもので、結果として内にパリの空気が封印されることになりました。
私は『能勢の空気』を作りました。
小壺の口は写真では開いているように見えますが、完全に閉じています。


『無を幻視するデュシャン』

デュシャンの作品に『Self-Portrait in Profile』(1958年)があります。
左の作品は『Self-Portrait in Profile』にヒントを得てつくろうとしています。
シルエットのシルエットでデュシャンのProfileを表現してみました。
無と虚を見続けたデュシャン〜ダブルシルエットの視線の先はどこを見つめているのでしょうか?


『An Introspective Duchamp』

この作品も『Self-Portrait in Profile』にヒントを得てつくろうとしています。



『Duchamp's House』

デュシャンは自分の作品について多くのことを語りましたが、私たちはデュシャンの真意をほとんど理解しないでいます。

私たちはデュシャンの作品に何を見てきたのでしょうか?
また今後とも何を発見しようとしているのでしょうか?

私たちを煙に巻き続けるデュシャン。





『背後に重力が』

デュシャンの関心事のひとつ、穴と空をテーマに作った作品です。











『Please Touch』

デュシャンはシュールレアリストというよりダダイストですが、1947年パリで開催されたシュールレアリズム展のカタログの表紙のデザインをしました。
黒いビロードの上に石膏で乳房を模ったものです。
「Please Touch」

私はアンビバレント(Ambivalent)を形にしました。


『ひとつの内部とふたつの窪み』

連続した曲面の壁で内部と外部はしきられます。

外部と思っていた壁が、フト、内部に変わることがあります。





『玄舟』


宇宙に漂う2そうの小舟という想定で作っています。
「何をおもい、どこへ行こうとしているのか?」

まだ制作途中ですが、ひとつが黒、ひとつが白+緋色になる予定です。



『ローズ・セラヴィとデュシャン』

この作品は『Self-Portrait in Profile』にヒントを得てつくろうとしている3部作のひとつです。

ローズ・セラヴィとはデュシャンの女性名と解することができます。
ローズ・セラヴィとデュシャンは陰と陽の関係にあります。

ローズ・セラヴィに扮したデュシャン

まさに『Self-Portrait in Profile』がそのことを暗示していたのです。
この作品も制作中。
素焼き後、少し手を加えて完成の予定ですが、なかなか乾かない。



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